反復つまりくりかえすこと
歌詞の創作論を始めます。
まずは「くりかえす」ことについて。今後つかいたいターム(用語)として、「反復」ということばの定義をします。
それから、別記事を立ててこの分析法の参照元となっている『新版 楽式論』(石桁真礼生、1949年→新版1966年、音楽之友社)についても書きたいと思います(石桁真礼生『新版 楽式論』が推し - フシギにステキな素早いヤバさ)。
さらに、反復の効果について考えを述べます。
反復
反復ということばは、くりかえすことを指します。
あるひとつの単位の完全なくりかえしを発見したとき、それを反復と呼びます。
反復には、
- 完全な反復と、
- 変化を伴いつつの反復
があります。
完全な反復の例としてアニメ涼宮ハルヒの憂鬱から「恋のミクル伝説」を引きます。
上の例で反復を指摘したいときには、
- 「ミ・ミ・ミラクル ミクルンルン☆」というフレーズが2回反復されている。
と書けばよいでしょう。
変化を伴いつつの反復の例として、VOCALOID曲から「とらいあんぐる☆Girl's Heart」を引きます。
ホントにキミがスキなんだ
やっぱりキミがスキなんだ*2
(「とらいあんぐる☆Girl's Heart」、作詞:SHIKI*3)
ここでは次のように書くとよいと思います。
- 前半4音の変化を伴いつつ「キミがスキなんだ」というフレーズが反復されている。
- 「ホントに:やっぱり」という対比が行われつつ、「キミがスキなんだ」というフレーズが反復されている。
直感的には、各行をそのままコピペして使える場合は「完全な反復」で、一部を書きかえる必要がある場合は「変化を伴いつつの反復」となります。
また、コピペするより全部手打ちで書いたほうが早そうな場合、反復よりも押韻と呼んだほうがいいかもしれません。押韻については今回は扱いません。
反復の効果
反復の効果は明確です。それが詩や歌詞であることを明示的に表現できることです。
僕が Togetter で何度か触れている押韻においては、ある構造をくりかえしていることを聞き手には悟らせないために「隠蔽」という表現をすることがあります。隠蔽する操作は、明示することと対比されるでしょう。
明示された反復構造は、表現それ自体によって聞き手に「歌詞」として聴くことを促します。また、くりかえすということはそれ自身を「音楽」として認めよと主張することでもあります。
たとえばどんな絵でもコマをもうけ、吹き出しを入れることによって「これはマンガです」と明示することができますが、歌詞においては反復を設置することでそのような形式性を与えることができます。
つまり、どんなに歌詞書くのが苦手だという人にも、とりあえず反復という技法さえ押さえておけば「歌詞」という形式を確保することは可能だということです。また反復をすることによって、もれなく「韻律」を獲得することができますが、今回は韻律には触れません。
どんなメロディーも、反復すれば「音楽」になるかといわれると微妙ですが、打ち込み、サンプリング音楽でいうところの「ループ」や「トラック」にはなる。そういう程度で理解してください。それだけに重要で基礎的な技法でもありますけどね。