【音楽】ハミングバード・ノーテーション 【表記法】
超文フリで頒布する『筑波批評』ではグッドマンの notation すなわち記法の話も扱っていたりするのですが…
はてなブックマークで「身近な人のあいだでバズってるエントリー」を毎朝メールでうけとっているのですが、それで気になったものをひとつメモ。ライフハック系のブログ IDEA * IDEA さんは昔からチェックしてることもあって、なんとなく良いものなのかなと気になりました。そちらのエントリーを読めばわかりますが、従来の五線譜への表記法を置きかえるひとつのアイディア(もしくはプロジェクト)のようです。
日本語の紹介記事
http://www.ideaxidea.com/archives/2013/04/hummingbird_notation.html
あとでよもうと思ってたんだった。
本家サイト(英語)
http://www.hummingbirdnotation.com
画期的な表記法というよりは、音楽教育的に利用しやすそうなひとつのメソッドに見えます。記法としては冗長さが目立ちました。ぼくはソルフェージュとか受けたことないので、音楽教育について真面目に考えているひとの意見もお聞きしてみたいですね。冗長さを省いたところに従来の五線譜の体系を置くような互換性のあるものとなっていると思います。
「え、そんなん要るの?」っていう批判的な意味で興味は惹かれたのですが、一時記憶だけで英語を読むのがだるいので、メモとるのをかねてブログにすることにしました。
ハミングバードは英語でハチドリのことをさすらしいですが、ここではおそらく口ずさむとかのほうにかけてるネーミングなんでしょう。
公式サイトの1行目にはこうあります。「音楽の記法に新しい受け皿を−−よりおぼえやすく、より速く読めて、トリッキーな音楽ですらよりシンプルに(記述する)」。
A fresh take on music notation — easier to learn, faster to read, and simpler for even the trickiest music.
音高 Pitch
音高は、従来の五線上の上下の位置だけで表記されていたものが、「頭韻」を利用した直感的な記号(符頭もしくは玉)によって置きかえるものとなっています。これは別に五線を撤廃して、記号だけで音高を把握させるわけではないので従来の方式に「付け加えた」もの、すなわち冗長な記法となっています。記法として冗長なのはどうなのかという疑問もありますが、冗長だと読むのが速くはなるでしょう。
ソルフェージュ的な発想(音名・階名をおぼえて歌わせる)ことを否定したものではないために、頭韻と記号、つまり音と視覚情報が音名とセットになっています。この論理の導入は、学校で子どもたちに一斉に唱えさせるのには教育的に向いているでしょう。フォルムではなく色で音高を表現する方法もありますが、色覚障害の問題や、印刷費の問題や、色が「意味」を帯びてしまうことなどもあるのであまり効率的ではないかもしれないですね。
一応訳しておきます。
- A:アバヴ(上)
- B:ビロウ(下)
- C:シー(アルファベットのCそのまま
- D:ドット(点)
- E:エンプティ(空っぽ)
- F:フル(満)
- G:グルーヴ(溝)
記号的にはかなりフラットなあてがいかたとなっていました。というのも、僕の前もっての偏見では、もう少し機能和声的な役割を与えられている記号が配されるのかなと予想していたからです。
でもよく考えると、これは階名ではなく絶対音高なので機能的な説明をするほうが都合わるいかなと気づきました。
音長 Rhythm
従来の五線譜と同じく、リズムをあらわす分数表記や小節線は保存されますが、音長はまるでピアノロールでMIDIを書くように、全音符から4分音符までは符幹の長さで視覚的に表記されます。符末まで見ずとも符頭を見た時点で音長を予測可能にする配慮なのか、符尾のような記号もみられます。これもまた「冗長」な表記です。
冗長性 Reinforced
冗長性への言及もありました。
There are multiple cues to the same information. Everything has both a symbol and spatial element, for all kinds of thinkers.
「強化されている。ひとつの同じ情報について複数のヒントがあります。いろんな考え方をするすべての人のために、すべての要素は記号と空間的なエレメントの両方を持ちます」
親しみやすい Frendly
従来の記法(自信をなくさせる、怖がらせる)よりもまるっこくて親しみやすくつくりましたとのこと。
どうしても実験音楽、電子音楽の(あのナゾの)記法に見えてしまうので、ぼくはちょい親しみを感じにくいのですが、とりあえず概要はわかりました。
本家サイトには楽譜のPDFもいくつかあるので興味ある方は見てみるとよいデス。
追記
グッドマン的な観点からの追記。
音長は符頭に併記された印によって、現行の五線譜上の表記の通りディジタルに表記されるが、符幹の長さでも表すという点は記号的な稠密性(記譜的であることから逸れる)を帯びてしまうのではないかと思いました。