【天才ハイスクール!!!! Genbutsu Over Dose 展】石井陽平 “あなたの未来へ届きますように” 論
この記事は、2015年4月17日から23日の7日間、高円寺にて開催されている展示についての批評である1。とりわけ、その展示から「理解できないけど生き生きと動くものへのあたたかいまなざし」という共通性を取り出して論じるものだ。
仕事の合間に書いているので完成度は低いけど、まあいいと思う。
展示がもうあと1日しかないので、結論だけ先に書いて、別の日に論の全体を示したいと思っている。
その手始めとして、「理解できないけど生き生きと動くものへのあたたかいまなざし」という性格をもっとも表していると思われる石井陽平の作品を取り上げる。
あたたかいまなざし
石井陽平 “あなたの未来へ届きますように” には、「理解できないけど生き生きと動くもの」への、「あたたかいまなざし」がいくつか重なって表現されている。それは愛や慈しみと言い換えられるかもしれないけれど、もう少し時間をかけて考えたいので現時点では結論を出せない。
「理解できないけど生き生きと動くもの」とは何か?
たとえばチームワレラの “世界のはざま” は卵からウズラのヒナがかえって育っていくという過程を描いている。ヒナの動きは理解不能だが生き生きとして可愛い。
ケムシのごとしの “楽しいことも 悲しいことも なにも覚えていない” は、作家自身が酔っ払いすぎてムチャクチャな行動をしている様を描いている記録映像だ。「こいつとは絶対お友達になりたくねえ〜〜」と思わされる。
だがそれゆえあたたかいまなざしを注いでいる来場者が多かった人気作だ。
涌井智仁の “God Speed You!!!!” はバイクを回路によって制御して、ランプの点灯やエンジンの回転数(?)をオートマティックに変化させる作品だ。ウズラが生まれてからというもの、ぼくにはこのバイクがとても可愛い生き物に見える。
そして、石井陽平の映像作品は、ふたりの男女が何かを眺めている表情をスクリーンに投影している作品だ。
表情のあたたかさ
この作品のタイトルと映像からはあたたかなフィーリングを、感じることができる。
映像を見れば、このリラックスした格好をしたふたりが同じものを目をキラキラさせながら見ていて、同じようなタイミングで笑い、鼻水を流し、涙していることがわかるはずだ。
スクリーンに映っている男女は実際に恋人同士であるらしく、左の女性は中村奈央、右の男性は石井陽平とのこと。会場にいても、この映像が「一番良かった」、「ハッピーなフィーリングがした」という観客の声をぼくは直に聴いた。
理解の壁
ところが、ふたりが何を見ているのかが映像やキャプションでは触れられていないので、観客にはわからない。わかるのは、何かを見ているふたりの視線の動きや表情の変化である。
それだけを淡々と見せられる。
つまり彼らと観客の間には理解を妨げる壁(ここではスクリーン)が作られている。
スキャンのズレ
ふたりの視線の動きに注目すると、左の女性と右の男性では見ているものに対してのスキャンの動きが同じではないことがわかる。ふたりは同じものを見ているのかもしれないけれど、視線の運び方がちがうのだ。
女性と男性の間には「見ているものの違い」という壁があり、それが可視化されているのがこの作品である。