ロジカル・アート・スクール第0講 ロジックとは何か(4)
ロジカル・アート・スクール第0講 ロジックとは何か(4)
さてアートについて考えてみましょう。Chim↑Pomの「スーパーラット」はなぜわかりやすくてグッとくるのか。
このヴィジュアルを大まかに読み取ると、渋谷の路上でピカチュウっぽいネズミがポーズをキメていると説明できます(これが大きいメッセージです)。
なぜ渋谷と分かるかというと、画像の左上に「渋谷駅前」と書いてあるし(これが小さいメッセージです)、その直下に有名な109のロゴが光っているし(同)、今はなきHMVが写っているし(同)、なによりこの路上と電光掲示板のなす構図全体が、テレビやマンガでよく知っている渋谷のイメージであるから(同)。なぜピカチュウっぽいと分かるかというと、黄色と黒をベースにしたネズミっぽいフォルムに、ほっぺが赤色の円形で、しっぽがカクカクに折れ曲がっているから(同)。そして素材がネズミであること、コミカルなポーズをとっていることは、それが「ゲーム・アニメ・マンガっぽいピカチュウのイメージである」ということを補強する要素なのでしょう(同)。かっこいいポーズを決めているのはストリート感、ファッション感なのでしょうか(同)。
これらを踏まえて再度抽象化をすると、この作品は当時の渋谷、あるいは東京、あるいは日本のイメージを表現していると説明することができるでしょう。
このように、Chim↑Pomのアートのヴィジュアルは、まず大まかな構造を示し、それに対して生じた疑問に対して、ヴィジュアルの細部やテキストが順々に答えていくという明確な構造を持っています。
そして、それらの要素を複合したイメージによって、「鑑賞者が知らない情報」を与えようとしていると理解できます。
ヴィジュアル表現においては、構図、そしてメインモチーフとバックグラウンドが主要な構成要素です。そして、それらのディテールがそれらを説明しリアリティを与える根拠として働いていきます。
とりあえず今回はここまで!