天草ミオ個展「SENTIMENTALGAG」レビュー
個展は明日までです。いきましょう。行ってください。行け!!!!! 行くべきです。
情報はもう書きました。見てください。新宿眼科画廊でやってます。ちなみに奥でやってる展示が非常に優れていましたので、それも行ってください。その展示良かったのでパルコキノシタさんがびっくりしていました。
ぼくは2回行きました。
【アート】おすすめ個展・天草ミオを見に行け。11/21-26@新宿眼科画廊 - フシギにステキな素早いヤバさ
天草ミオの何がいいのか
天草ミオさんは何をやっているかというと、透明で柔らかめのシート、つまりアニメのセルを思わせるような支持体にアクリル絵具で絵を描いている方です。
端的に特徴を列挙すると、
以上を挙げた上で、しかし単にそうなのではないということを書きます。
ねこ少女
タイトルは控えてないのでわかりません。勝手につけました。
この絵はどうなっているか。
支持体は先ほど述べた透明なふにゃふにゃしたセルみたいなもの、メディウムはアクリル絵具です。
構造は、下図の通りで、一般的なペインティングとは逆に、いわゆる「裏面」を提示しているような表現になっています。
ご存知でしょうが一般的な絵画は、キャンバスやパネルを支持体にしてその上に油絵の具やアクリル絵具を積み上げ、この「おもて面」を見せている構造になっています。
つまり描画が新しければ新しいほど、おもて面に露出する、という直感的に「自然」な構造が露出しているわけです。
ところが、アニメのセル画や天草ミオさんの技法では、描画が古ければ古いほど、鑑賞者の前へ露出され差し出される=プレゼンテーションされるわけです。直感に反して、制作の時間と、鑑賞の時間とが逆転するということです。
ここから谷口真人さんを連想する方もいるかもしれません。
SUNDAY ISSUE ≫ Schedule » Gallery » 谷口真人 個展 「アニメ」
支持体、および表現方法からみた谷口真人さんとの違いを述べます。
谷口真人さんの表現において支持体はガラスであり、一方、天草ミオさんはセルのような支持体を用いています。
この違いは、第一に、厚さあるいは厚みにあります。
ガラスという支持体は厚みを持ち、メディウムと支持体の間に知覚可能な距離を作り出します。これは支持体を鏡に置き換えても同様です。スマートフォンの画面もまたそうでしょう。
ガラスというレイヤーが、プレゼンテーション層つまりコンテンツの描かれている層と、あきらかに視認可能な剥離を生み出すのです。
ところが、天草ミオさんの選択したセルっぽい支持体はほとんど厚みをもたないため、ツルツルしたテクスチャーと、そこに裏面から密着したアクリル絵の具のメディウム、およびそういう支持体に描いて裏側から見たときのブラシのタッチが前面にせり出してきます。表現の。
つまり、支持体のツルツルしたテクスチャーだけ盗み取り、厚みを無視するということです。
天草ミオさんは「裏側」ということに関心があるようです。あるいは「両面」かもしれません。
そういういいかたをするとプラモデルの抜いた型の残りの造形に惹かれる大竹伸朗のようにも聞こえますが。多分全然違うとは思います。
これはぬいぐるみを解体してアジの開きみたいな状態にしたのだと思われます。
面白い点はふたつあって、一つ目はぬいぐるみの裏側を見てみたいという視点、もう一つは、単にそれを露呈するだけではなく、それ自体を表現として独立させようという作為/創意=クリエイティビティが見える点です。
ぬいぐるみの構造もまた、本来は裏地を縫い合わせて、ある時点でくるりとひっくり返したものです。外側の表面ではなく、内側の裏面にこそ縫いの時間は費やされたはずなのですが、事後的には隠蔽されている表面があり、それが天草ミオさんの作品では露呈されているわけでしょう。
もう疲れたのでとりあえず何か文句があったら [twitter:@yaoki_dokidoki]までどうぞ。