フシギにステキな素早いヤバさ

フシギにステキな素早いヤバさを追いかけて。俺は行くだろう。

飛び出すときを待つ過去の文章たち(1)

2007年ごろにほぼ孤独に書いていた文章です。誰のためでもなく、自分のバンドやともだちのバンドを理論的にとらえなおすために書こうとしていたのだと思います。
今は他に優先したいことがありますが、準備が整ったら書きたいことがたくさんあります。
そのプレゼンのようなものです。
これは新しい音楽への批評のために(2007年) - フシギにステキな素早いヤバさにある程度完結した形を与えるためにとり外された未完の部分です。

NUMBER GIRL のリズム)

その音程関係とリズム関係とに注目しながら、ナンバーガール NUMBER GIRLイースタンユース eastern youth の反復志向について考察を試みる。ここで目指されるのは、批評用語の体系化である。先に示した批評用語の第一形態とは、「ナンバーガール的」、「イースタンユース的」のような、喩えの表現技法であった。さらなる分析のために、「ナンバーガール的」とは何か、その表現を安定させる状況とは何の要素からなるのを、より抽象度の高い用語によって規定しなおすこと、以下ではそれが目指される。

はじめにナンバーガールのベストアルバム『オモイデインマイヘッド 1』*1に収録された楽曲によって彼らのリズム志向の変遷を指摘したい。彼らの音楽について一言でしばしば言い表わされるのが「直線的」で「鉄」のイメージを持つことである。もちろんこれはボーカル(=向井秀徳)の発言に由来する。この言葉のイメージがもっとも端的に理解できるのは楽曲「鉄風 鋭くなって」についてである。以下私たちは、ナンバーガールの音楽の特質をそれら二つの言葉・概念に求めながら、彼らの音楽性を概観したい。

「イギーポップファンクラブ」*2のイントロでは、1小節の長さで構成されたパターンが、3回の同形反復と1回の変形反復の組み合わされたものとして観察される。これはのちに「透明少女」「鉄風 鋭くなって」において指摘されるような、焦燥感のあるナンバーガール的な速さに比べればはるかにその回転速度は遅い。したがってこれを標準的なロックの回転率である4分の1の回転率を持つ楽曲だと呼ぼう。この頃のナンバーガールは、イースタンユースにも共通するような反復性を志向すると説明されるのである。

「ドランクンハーテッド」*3のイントロでも、4分の1の回転率が観察される。

「透明少女」*4では冒頭の田淵ひさ子のギターによって4分の0・5の回転率がついにあらわれる。つまりそこでのパターンの基本単位は2拍である。そしてこの楽曲こそまさにナンバーガールの硬直した反復強迫性を代表するものと指摘されるだろう。


同じ4分の0・5の回転率を持つ「鉄風 鋭くなって」とこれが区別されるのは、コードが進行するかの区別による。つまり、「鉄風 鋭くなって」では具体的には次のように、ベース(=中尾憲太郎)においてコードが2拍ごとに切り換えられる。結果的に、それは4分の0・5の回転率でどんどんと時間が前進するような感覚を私たちにもたらす。一方、「透明少女」では右ギター(=田渕ひさ子)においてひたすら同じ高さのコードが2拍ごとにくりかえされる。

鉄風 鋭くなって」・ベース ‖♪♪♪♪|レ♪♪♪♪|♪♪♪♪|レ♪♪♪♪‖
(*かつて僕の表記で「レ」印は、そのポイントで音程が上がることを示していました。)

「透明少女」・右ギター ‖♪♪♪♪|♪♪♪♪|♪♪♪♪|♪♪♪♪‖

(未完)

*1:OMOIDE IN MY HEAD 1 〜BEST & B-SIDES〜』、東芝EMI、二〇〇五年。同アルバムは2枚組み。以下ではオリジナル録音の収録ディスクタイトルと、同アルバムでのディスク番号およびトラックナンバーを示す。

*2:ナンバーガール、1997a=2005:1-1。

*3:ナンバーガール、1998a=2005:1-2。

*4:ナンバーガール、1999a=2005:1-3。